荒波を乗り切る「薬局」になるには
政治活動

荒波を乗り切る「薬局」になるには

10年経ったら、薬剤師の仕事は現在行っている仕事のやり方とは業務内容は激変するでしょう。この大きな波に、意志を持って荒波を泳ぎきって、新たな陸地で新しい薬剤師の仕事をするのか、私たち薬剤師の覚悟が問われる時がいま訪れています。

日本薬業政治連盟大阪府支部から講演依頼を頂き「大阪の政治と薬業の今後を読む」をテーマに講演させて頂きました。一昨年落選してから取り組んできた「子宮頸がんワクチン対策」「少子化対策(慢性疾患を抱えていても妊娠しやすい環境をつくる)」「肝炎対策(術前健診の問題を解決)」「循環器病の予防対策」「外用貼付剤業界の育成」「創薬産業を日本の基幹産業へ(骨太の方針に入れる)」など議員バッチがなくても挑戦してきた政治活動について詳しく説明。いつ訪れるか分からない衆議院選挙にむけての体制作りの話も加えさせて頂きました。

その中で「薬局」が今後どのように変化していくのか、お話しした私なりの見解を以下にまとめて書かせて頂きます。

今後の薬局には①「連携」②「分割」③「差別化」の3つの波が押し寄せてくると考えられます。

①「連携」の大切さを浮き彫りにしたのは、全国で最多のコロナによる犠牲者を出した大阪でした。患者さんの多くは「医療と介護の連携」が機能せず、その谷間で犠牲者を多く生んでしまいました。この連携に最も適しているのが、医療と介護の両方で使う薬の専門家である薬剤師だと考えます。薬剤師は地域医療への密着度も高く、地元の患者さんとの信頼関係も築けています。地域医療を充実させるために、病院以外で患者と直接接点を持たない「臨床検査技師」「理学療法士」「栄養士」「救急救命士」などの多くの医療従事者を薬局という場に招き入れて、「病を発症させない医療」と「病を再発させない医療」に挑戦していくことが今後は大切です。多職種との連携で地域医療の充実を図れるのは、薬局しかありません。

②「分割」は昨今規制改革で話題になっている「調剤の外部委託」が導入されてしまえば、否応なく引き金を引くことになるでしょう。オンライン診療や電子処方箋の充実でこの流れは加速すると考えておかなくてはいけません。薬局が今まで行ってきた、薬剤の管理⇒調剤⇒カウンセリング⇒薬の手渡しの業務は今後分散化される可能性が高くなります。「調剤の外部委託」が許されるなら配送も外部委託されてしまい、処方薬の配達も当たり前になってしまうでしょう。薬局の機能として確実に残るのは「カウンセリング」です。しかし、ここにもChat GPTの出現に影響を受けることになります。薬剤師のカウンセリングの職能をいかに高められるのか、しっかり考えておくことが重要です。その解決のカギは、上段に書いた「連携」にあると私は考えます。

③「差別化」は、従来の薬局の差別化は立地で行われてきましたが、今後オンライン診療や電子処方箋が当たり前のようになれば、バーチャルとリアルの融合が薬局でおこなわれるようになり、薬局の立地の違いは意味をなさなくなります。これからは「薬局」「薬剤師」の人としての魅力や信頼のつなぎ方をバーチャルとリアルの両方でなされることが「差別化」になると予想されます。

10年経ったら、薬剤師の仕事は現在行っている仕事のやり方とは業務内容は激変するでしょう。この大きな波に、じっとしていて飲み込まれてしまうのか、意志を持って荒波を泳ぎきって、新たな陸地で新しい薬剤師の仕事をするのか、私たち薬剤師の覚悟が問われる時がいま訪れています。